桜美林大学の芳沢光雄教授によると、統計的に人間が出す手の確率を調べた結果、グーは35.0%、 チョキは31.7%、 パーは33.3%でした。みんながこの確率に従うとき、$n$人でじゃんけんしてパーを出し続けると勝つ確率はどうなるのかということが気になったので、計算して求めることにしました。
じゃんけんの条件を決めなければ計算できません。そのため、ここで扱うじゃんけんの条件は以下のように定義します。
求める確率は上記の条件下で最後まで残った1人が$A$である確率です。
これを$P(A wins|n)$とします。
$P(Awins|n)$を求めるにはあいこになる確率を求める必要があります。
あいこになる確率は、あいこになる余事象、すなわちあいこにならない確率から求めます。
$A$はパーを出し続けるので、あいこにならないのは$A$以外の人が①「グーやパーを出すパターン(全員パーは含まない)」、②「チョキやパーを出すパターン(全員パーは含まない)」があります。
①は上の図のようなパターンが考えられます。よって、①になる確率は①のそれぞれのパターンの和を求めればいいので、
${}_{n-1}C_{0}・P_{rock}^{n-1}・P_{paper}^{0}+{}_{n-1}C_{1}・P_{rock}^{n-2}・P_{paper}^{1}+{}_{n-1}C_{2}・P_{rock}^{n-3}・P_{paper}^{2}+\dots+{}_{n-1}C_{n-2}・P_{rock}^{1}・P_{paper}^{n-2}$
二項定理は
$(a+b)^n={}_{n}C_{0}a^{n}b^{0}+{}_{n}C_{1}a^{n-1}b^{1}+{}_{n}C_{2}a^{n-2}b^{2}+\dots+{}_{n}C_{n}a^{0}b^{n}$
であるから、①は二項定理より$(P_{rock}+P_{paper})^{n-1}-P_{paper}^{n-1}$と表せます。
また、②は①と同様の手法で$(P_{scissors}+P_{paper})^{n-1}-P_{paper}^{n-1}$と表せます。
よって、あいこにならない確率は①と②の和になるので
$①+②=(P_{rock}+P_{paper})^{n-1}+(P_{scissors}+P_{paper})^{n-1}-2P_{paper}^{n-1}$
したがって、あいこになる確率は
$1-(①+②)=1-\{(P_{rock}+P_{paper})^{n-1}+(P_{scissors}+P_{paper})^{n-1}-2P_{paper}^{n-1}\}$
これを$P(draw|n)$とします。
すなわち、
$P(Awins|n)$を求めるにはこの確率も求める必要があります。この確率は一回のじゃんけんで勝敗が決まったときの確率です。
この確率は上の図のように、「$A$はパーを出し続けるので、勝つ$m$人($A$を除いた$m-1$人)はパーを出し、負ける$n-m$人はグーを出す」と考えることができ、
${}_{n-1}C_{m-1}・P_{rock}^{n-m}・P_{paper}^{m-1}$
となります。これを$P(win|n,m)$とします。
すなわち、
$P(Awins|n)$を求めるために、2人でじゃんけんして最後まで勝ち残った1人が$A$である確率$P(Awins|2)$を求めます。
$P(Awins|2)$は
2人でじゃんけんして、
(1回目に$A$が勝つ)または(2回目に$A$が勝つ)または(3回目に$A$が勝つ)または$\dots$
すなわち、
2人でじゃんけんして、
(あいこにならずに$A$が勝つ)または(1回あいこになり、その後$A$が勝つ)または(2回あいこになり、その後$A$が勝つ)または$\dots$
と考えることができるので、式にすると
$P(Awins|2)=P(win|2,1)\{P(draw|2)\}^0+P(win|2,1)\{P(draw|2)\}^1+P(win|2,1)\{P(draw|2)\}^2+\dots$
これは初項$P(win|2,1)$、公比$P(draw|2)$の無限等比級数の和と考えることができるので、公比$P(draw|2)$が$P_{paper}\neq1$のとき、$0\leqq{P(draw|2)}<1$で、無限等比級数の和の公式から
$P(Awins|2)=\frac{P(win|2,1)}{1-P(draw|2)}$
$P(Awins|3)$も求めます。
$P(Awins|3)$は
3人でじゃんけんして、
($A$が一人勝ちする)または($A$が二人で勝ち、その後に$A$が勝つ)
と考えることができるので、$P(Awins|2)$を求めたときと同様に、式にすると
$P(Awins|3)=\frac{P(win|3,1)}{1-P(draw|3)}+\frac{P(win|3,2)}{1-P(draw|3)}\cdot{\frac{P(win|2,1)}{1-P(draw|2)}}$
よく見ると式の中に$P(Awins|2)$が含まれていて、
$\frac{P(win|2,1)}{1-P(draw|2)}=P(Awins|2)$と書き換えられるので、
$P(Awins|3)=\frac{P(win|3,1)}{1-P(draw|3)}+\frac{P(win|3,2)}{1-P(draw|3)}P(Awins|2)$
$P(Awins|n)$を求めます。
$P(Awins|3)$を求めたときと同様に考えて、$P(Awins|n)$は
$n$人でじゃんけんして、
($A$が一人勝ちする)または($A$が二人で勝ち、その後に$A$が勝つ)または$\dots$または($A$が$n-1$人で勝ち、その後に$A$が勝つ)
と考えることができ、式にすると
$P(Awins|n)=\frac{P(win|n,1)}{1-P(draw|n)}+\frac{P(win|n,2)}{1-P(draw|n)}P(Awins|2)+\frac{P(win|n,3)}{1-P(draw|n)}P(Awins|3)+\dots+\frac{P(win|n,n-1)}{1-P(draw|n)}P(Awins|n-1)$
となり、$P(Awins|1)=1$とすると$\sum$を使ってまとめることができ、
$$P(Awins|n)=\frac{1}{1-P(draw|n)}\sum_{m=1}^{n-1}{P(win|n,m)P(Awins|m)}$$
$$=\frac{1}{(P_{rock}+P_{paper})^{n-1}+(P_{scissors}+P_{paper})^{n-1}-2P_{paper}^{n-1}}\sum_{m=1}^{n-1}{{}_{n-1}C_{m-1}・P_{rock}^{n-m}・P_{paper}^{m-1}・P(Awins|m)}$$
$P(Awins|n)$の計算式を得ることができました。
青のグラフは$A$以外の人が出す手(グー、チョキ、パー)の確率をそれぞれ$\frac{1}{3}$としたときのグラフです。(このとき、$P(Awins|n)=\frac{1}{n}$となります。これは数学的帰納法により証明済みです。)赤のグラフはA以外の人が決められた確率(↓の確率)で手を出したときのグラフです。(確率を入力して、「確率を計算してグラフを再描画」を押すと確率が自動で計算されてグラフが描画されます)
グラフの計算式
桜美林大学の芳沢光雄教授によると、統計的に人間が出す手の確率を調べた結果、グーは35.0%、 チョキは31.7%、 パーは33.3%でした。
$A$以外がその確率に従うとき、横軸を人数、縦軸を$P(Awins|n)$とすると、グラフは以下のようになります。
グーの確率:$P_{rock}=$
チョキの確率:$P_{scissors}=$
パーの確率:$P_{paper}=$
計算するじゃんけんの人数:$n=$人まで
都合上、写真では$P(Awins|n)$を$h(n)$、$P_{rock}$を$a$、$P_{scissors}$を$b$、$P_{paper}$を$c$と書いています。
出す手の確率がそれぞれ$P_{rock},P_{scissors},P_{paper}$だから、その和は$P_{rock}+P_{scissors}+P_{paper}=1$となります。そのため、$P_{rock}$を$x$座標、$P_{scissors}$を$y$座標、$P_{paper}$を$z$座標とする点は、$x+y+z=1$という平面の方程式を満たします。また、$0\leqq{P_{rock}}\leqq{1},0\leqq{P_{scissors}}\leqq{1},0\leqq{P_{paper}}<1$であるので、点の集合は$(1,0,0),(0,1,0),(0,0,1)$を頂点とする三角形で表すことができます。$n$の値を定めて、三角形上の点の$P(Awins|n)$を求め、0に近ければ青、1に近ければ赤で描き、図にすると以下のようになります。
出す手の確率の引用:日本じゃんけん協会
https://japan-rps.jimdofree.com
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